【限定】手作り食に対する本音(2023年3月17日)

「手作り食」ってどういうイメージですか?

作るのは手間だけど、売っているペットフードより健康的でしょ?

こんなイメージの方が多いと思います。
結論をいうと、半分正解で半分間違いです。
ちなみに、YouTube動画で私は「手作り食をオススメしない」とお伝えしました。

(参考動画)犬と猫に手作り食をあげてはいけない

この動画のタイトル通り、私は「手作り食を使わない派」ですが、何事にも「利点と欠点」があるのものです。
今回は手作り食の利点と欠点について解説します😊

目次

手作り食の利点

巷にはたくさんの手作り本が売っています。この記事をご覧になっている方の中にも手作り食について勉強されている方はいらっしゃると思います。
手作り食には超すばらしい利点があるので、実際に体調不良の時に手作り食をあげると元気になることが多いです。
その利点とはズバリ水分です。
理由は単純で、体調不良の原因に「水分不足」が多いからです。
「水分不足」になると、 犬は「皮膚」猫は「尿石症」に特に影響が出やすいように感じます。

▼それぞれの水分量
・本来の食事(獲物)…70%
・カリカリ…10%

・ウエットフード…80%

なので、カリカリを主食にしていると脱水するのは当然ですよね。

たしかに、手作り食関連の本には手作り食で愛犬(愛猫)が復活した系のエピソードがたくさん紹介されていますし、事実だと思います。そして、ペットフードより手作り食の方が優れているという内容ばかりです。ただし「ドッグ(キャット)フード=ドライフードとする」という説明がこっそり書いてあったりします😅


これは人間の健康食も同じで、「ヴィーガンで健康になる」というのは「ハンバーガーとコーラを主食にしているアメリカ人と比較して」だったりします。ヴィーガンを地中海料理やロカボや和食と比べ、長期的に追跡したら結果は変わってくると思います。話を戻すと、手作り食派の方の意見の本質は、ドライフードだけだと水分不足になるから、ウエットフードを活用しようねという私がいつも発信していることと同じですね😊

▼いろんな人間の食事
身も蓋もないことを言うと、世の中の多くの人はどーしよーもない食事(ジャンクフード大好き🍜)をしているので、何かしら気を使った食事なら体調は良くなります。
これが何でもかんでも「この食事法で健康になる!」と謳われるカラクリです。
・ヴィーガン

…動物性の食品を一切食べない。長期的に身体に良いかは微妙ですが、ジャンクフードよりマシ
・ベジタリアン
…ヴィーガンに近いけど、場合によっては卵、魚、乳製品はOK


・地中海料理
…オリーブオイル、野菜、魚介類を多く使う食事。健康的。


・和食
…野菜、果物、魚介類、海藻が豊富。健康的。


ロカボ
…ゆるい糖質制限(1食20〜40gの糖質が目安)。健康的。


スーパー糖質制限
…1日の糖質を全カット。やってみたら、生活満足度が下がりました。


MEC(めっく)食
…Meet(お肉)・Egg(卵)・Cheese(チーズ)を積極的に食べる食生活。おすすめです。


・ジャンクフード
…ハンバーガー、フライドポテト、お菓子、清涼飲料水、アイスクリームなど、体に悪い食品。まさにジャンク(がらくた)。美味しいけど。

手作り食の欠点

ペットの手作り食の決定的な欠点は必要な栄養素を満たすのが難しいことです。
手作り食に関する研究を2つご紹介します💁🏻‍♂️

▼2019年の論文…原文はこちら
・犬で75個、猫で25個、合計100個の手作り食のレシピの分析
・結果、すべての栄養素を満たすレシピはゼロ
・しかも、全体の84%のレシピは3つ以上の栄養素が不足していた。
・特に不足が目立ったのはミネラルで、犬のレシピではCaとK、猫のレシピではFeとZnの不足が目立った。
・長期的なミネラルの不足は甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、血圧や腎機能の異常、貧血・脱毛などの問題が起こる可能性がある。
・さらにタンパク質や脂質の不足も観察され、犬用ベジタリアン・ヴィーガンのほとんど、猫用ベジタリアン・ヴィーガンのすべてがタンパク質の必要量を下回っていた。
・タンパク質が不足した食事では必須アミノ酸がしっかり入っていない可能性がある。
・手作り食の問題点は、栄養素が不足していたとしても、血液検査や尿検査などの一般的な検査でその欠乏症を発見するのが難しいコト。
不適切な手作り食は犬や猫の健康に悪い可能性がある。
▼2019年の論文…原文はこちら
114個の犬と猫の手作り食レシピを分析
・結果、そもそも曖昧な表現のモノも多く、分析に使えるレシピは94個だった。
・そして、すべての栄養条件を満たすものはゼロ
・分析したレシピの中には獣医師が作成したレシピも含まれていたが、微量栄養素や(猫では)タウリンが足りないモノもあった。
※タウリン=猫の必須アミノ酸
・分析した手作り食の6.4%はタンパク質が不足していた。
・その他、不足が目立った栄養素はコリン、鉄、チアミン、亜鉛、マンガン、ビタミンE、銅だった。

手作り食に対して否定的なコトを言うと怒ってくる方がいるので、公の場で言うのは気が進まないのですが、客観的に見ると手作り食で総合栄養食を作るのはほぼ不可能(コスパが超絶悪い)と考えて良さそうです。私が言うのもなんですが、「獣医師が作ったメニューだから安心」というわけでもありません。

まとめ

健康な犬と猫に手作り食をメインで与えるのは栄養不足になるのでオススメしません。ウエットフードを使った方が良いです。
私が思う、手作り食を使っても良いパターンはこんな感じ。

・体調が悪い。そして、手作り食以外に手段がない。
・体調が良い。手作り食をおやつ程度(食事全体のカロリーの2割以内)に与える。
栄養補給というより水分補給という目的で、手作り食を愛犬・愛猫の食事の引き出しの1つにするのは賢い使い方法だと思います😊

 

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この記事を書いた人

猫好きの獣医師です。野生動物の診療、動物病院の勤務、研究職を経て、今はフリーランス獣医師です。主に犬と猫の食事の情報を発信します。世間には誤った知識が多く(古い知識がまだ当たり前になっていて)、栄養学にうとい獣医師も少なくありません。微力ながら犬と猫の命を救う手助けができれば幸いです。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 昔、友達の飼い犬に、手作り食へ変えて、毛並みが見違える程綺麗になったと言ってました。
    「獣医師が作ったレシピ」と見出しに書いてたら、購買意欲が湧きますね笑
    何が正解か分かりませんが、私は自分に作れる自信がないので、これからも先生の動画を拝見しながら猫専用のご飯を買ってあげていきます笑

  • アリエルさん
    「獣医師」はパワーワードですのでお気をつけください。私も使っていますが(笑)
    犬(特に大型犬)にウエットフードだけを与えるのは経済的に難しいことが多いので、手作り食を併用するのは1つの最適解だと思います。正解は結果を見ないと分かりませんが、アリエルさんの場合は今の食事が最高の選択だと思いますよ👍

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