正味のタンパク質量の計算方法(2023年10月6日)

ちょっと難しい話なのですが、知っていると100%得をするのでぜひ最後までお読みくださいませ💁🏻‍♂️

先週末のオフ会でこんな会話がありました。

👩 くぅ先生、うちの子には低タンパクなフードとしてこれを使ってて。。

差し出されたのは、健康缶のパウチ。
タンパク質は6.1%

ちょっと待ってくださいね。このフードは高タンパクですよ💡

👩は?
👩‍🦱🧒🏻🧑‍🦰えぇ〜?

びっくりする飼い主さん&そのテーブルの飼い主さん達。

そう、DMの概念がなければこのフードを低タンパクだと錯覚してしまうのです。
過去に一度解説しているのですが、改めてDMについて解説します!

(参考)【上級者向け】DM(乾物量)をマスターしよう!(2022年11月3日)

目次

DMとは

DMはダイレクトメッセージ」 ではなく 「Dry matter」 つまり 「乾燥重量」のことです
フードの水分を差し引いて、 正味どのくらいの栄養があるかを知るためのものです。

結論から言うと式はこちら▼
DM=栄養成分÷(100-水分)×100

計算方法の解説の前に、なぜDMが重要なのかをご説明します。
その理由は、水分を全て蒸発させた「乾燥重量」でないと、フードを評価したり、比較したりすることができないからです。
ドライフードはどれも水分が10%くらいなので、成分表の数値で評価や比較ができるのですが、ウエットフードは水分が75〜95%くらいで幅が大きいので、やはりDMでの比較が重要になります。

タンパク質の適正量

法的な基準はありませんが、AAFCOの基準ではこんな感じです。

・成犬:DM18%以上または45g/1,000kcal以上
・成猫:DM26%以上または65g/1,000kcal以上

ポイントは、DMで語っているというコトと、上限がないということです💡

一方、ペット栄養管理士のテキストではこんな感じです。

・若成犬:DM18〜30%
・中・高齢犬:DM15〜23%
・成猫:DM30〜45%

私から付け加えるなら、植物性のタンパク質は質が低いので、同じタンパク質量でも動物性のタンパク質が多い方が効率よく体で利用され、ゴミも少ないです。

(参考)良質なタンパク質はコレ!(2022年8月14日)

糖質の適正量

法的な基準もなければ、AAFCOの基準もありません。3大栄養素の1つなのに不思議(笑)
闇を感じますね〜

ペット栄養管理士のテキストでは犬に関する記載はなく、「猫はDM35%ならOK!」というふわっとした記載があるだけです。

ちなみに、私がYouTubeで糖質30%以下を目指しましょう〜!と言っているのは、過去の論文で糖質31%のフードなら犬も猫の血糖値の変化に影響がなく、41%のフードなら影響があるという報告があるからです。

(参考)The effect of dietary starch level on postprandial glucose and insulin concentrations in cats and dogs

血糖裏が上がる=病気になるという証拠はないのですが、少なくとも人間では高血糖が糖尿病・肥満・酸化・炎症のリスクを上げますし、犬猫本来の食事の糖質はせいぜい数%なので、フードの糖質は30%以下の方が無難かな〜と結論づけています。

実際に計算してみよう!!

では、先ほどの健康缶を見てみましょう!


タンパク質のDM

・タンパク質6.1%、水分91.4%ですので

・タンパク質のDM
 =栄養成分÷(100-水分)×100
 =6.1÷(100-91.4)×100
 =70.9%

つまり、タンパク質が高い商品になりますね。

「じゃあダメじゃん!」って思われるかもしれませんが、水分をきっちり摂れていたら解毒する肝臓や排泄する腎臓への負担を減らすコトができますので、私は気にしなくて良いと思います👍

糖質

・糖質≒100-タンパク質-脂質-粗繊維-灰分-水分
  =100-6.1-0.2-0.1-1.2-91.4
   =1%

・糖質のDM
 =栄養成分÷(100-水分)×100
 =1÷(100-91.4)×100
 =11.6%

ほとんどのウエットフードはこんな感じで低糖質ですね😊

まとめ

今回の内容は限定コラムの中でも難しい話題でしたがいかがだったでしょうか?とてもYouTubeの視聴者さんに理解できるとは思えない内容です😅

そして獣医学部でも習わない内容です。今の学生は栄養学も習いますが、テキストを見た限りでは浅〜い内容なので、あまり主治医に話しても理解されないかもしれません。
でも、大事な知識ですし、フードの成分表やHPにも「DM」「乾物量」というワードがしょっちゅう出てきます。
知っていたら急に見えるようになると思いますので、ぜひ探してみてください。

ご質問がありましたらコメント欄にお願いします😊

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この記事を書いた人

猫好きの獣医師です。野生動物の診療、動物病院の勤務、研究職を経て、今はフリーランス獣医師です。主に犬と猫の食事の情報を発信します。世間には誤った知識が多く(古い知識がまだ当たり前になっていて)、栄養学にうとい獣医師も少なくありません。微力ながら犬と猫の命を救う手助けができれば幸いです。

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