【限定】犬猫の尿石症の食事管理(2023年11月10日)

秋〜冬は尿石症が増えるシーズンと言われています。
体感的には一年中多いので共感しかねますが、現在個別相談をお受けしている中にも尿石症の猫様がいらっしゃいます。

日本獣医生命科学大学の宮川先生が先月のペット栄養学会誌で尿石症に関して述べられていたので、それに私の知見を加えて分かりやすく解説します😊

ちなみに、宮川先生は猫の飼い主さんの必読書「猫の腎臓病がわかる本」の著者ですね🖊️

目次

犬と猫で共通なコト

結論、水分が大事。
これが大前提ですが「尿石症=食事の問題」と認識されすぎているのも問題です。
つまり、膀胱炎、環境、運動なども要因になります。

まず、膀胱炎。
膀胱炎では、膀胱内に有機物、細胞、細菌などがたくさん浮遊した状態になります。
これが結石の核になります。
そして、結石は物理的に膀胱を傷つけるので、膀胱炎はさらに悪化します。
膀胱炎の原因は、犬は細菌感染、猫は特発性(ストレス説が濃厚だけど原因不明)が多いです。

次に環境。
犬では散歩時間が短かったり、新鮮な飲水がしづらかったりすると、尿が膀胱にとどまる時間が増え、結石が育ちやすくなります。
猫ではストレスで膀胱炎になることが多いので、ストレス源の見直しが必要になります。トイレ・飲水スポットの改善や、自分の居場所と逃げ場を作ってあげるのが重要です。

最後に運動。
運動をすると代謝水ができ、尿量が増えると言われています。そして喉が渇くので水をよく飲むようになります。
どのくらい代謝水ができるのかは私には分からないのですが、運動は健康維持のためにも超大事です。
具体的には犬だとがっつりした散歩、猫だとキャットタワーやいろんな遊びの検討です。

余談ですが、人間だと運動は脳を活性化させます。

ちなみに、運動は体の若さもキープしてくれますね✨

水族館で働いていた時代、上司のおじさん達を見渡してみたところ、デスクワークばかりしている総務課のおじさん👨🏻より重いバケツを持って走り回っている飼育課のおじさん👦🏻の方が同じおじさんでも明らかに若く見えた理由はこれかもしれません💡
動物達の癒し効果もあるかもですが🐬

ストルバイトの管理

犬猫ともに膀胱炎の管理が重要になってきます。なぜなら、膀胱炎での出血が尿のpHを上げるからです。ちなみに、尿の理想的なpHは6.0くらいですが、血液のpHは7.4です。

予防としては犬も猫も十分な水分摂取です。
つまり、ウエットフード。難しい場合はカリカリをふやかしたり、自動給水機を設置したり、ペット用のゼリーを使うのもアリです👍

犬(特に雌)は細菌性膀胱炎が多く、一部の細菌は尿素を分解してアンモニア(アンモニアはアルカリ性)を産生するのでタンパク質制限が推奨されています。
タンパク質は代謝されて尿素として尿に排泄されるので、食事のタンパク質を制限すると、一部の細菌の餌となる尿素を減らせるからです。
雌猫の場合は陰部を洗ったり、濡らした清潔なタオルで拭くのも効果的です。

猫は特発性膀胱炎の対応としてストレス対策が重要になってくるので、環境改善の検討です。
ストレス対策や環境改善については最近の動画を参考にしてください💁🏻‍♂️

シュウ酸カルシウムの管理

シュウ酸カルシウムは食事で溶けません。まだ結晶の段階なら尿量を増やして流し切ることは可能ですが、基本的に治療法は手術しかありません。

食事で気をつけることはタンパク質制限(タンパク質の多い食事だと尿が酸性になる)、カルシウムの制限、クエン酸の摂取(シュウ酸の代わりにカルシウムと結合する)、シュウ酸の摂取制限などが挙げられます。
ところが、最近よくあるストルバイトとシュウ酸カルシウムの両方に効果があると謳っているフードはマグネシウムを制限して尿を酸性化させ、一部では高塩分食(人では高塩分食がシュウ酸カルシウムの原因になる)になっています。

なので、結論、微妙です。

結局はストルバイト結石の予防と同じで水分をたくさん摂ることが最高の予防法になりますね。

気をつけないといけないこと

知識のない獣医師やペットショップの店員が適当な指導をすることがあるので、私としてはそこが1番の懸念点です。
例えばこんな感じです▼

👨🏻獣医師「1回ストルバイトになったら一生療法食にしなさい」

飲水量の指導はしましたか?過去の食事歴を詳しく質問しましたか?生活環境に改善の余地はないですか?一生療法食にするリスクを説明しましたか?「そういう体質」以外の選択肢がなければ致し方ないですが・・

🧑‍🦰ペットショップ店員「猫のストルバイト結石にはタンパク質制限です」

それは犬です

🧔‍♂️ペット食育士講座の先生「猫のストルバイトの原因はウレアーゼ産生菌だから、タンパク質制限が必要です」

先生、それは犬です。猫のメインは特発性です。

すべて実話です。
こんな感じでめちゃくちゃ言う人が多いので、尿石症に関しては犬・猫両方の特徴を知識として持っておくことをおすすめします🙆🏻‍♂️

ちなみに、宮川先生は学会誌の中で「尿石症の管理は食事療法と考えられることが多いが、むしろ療法食が結石の原因になりうる」とおっしゃっています。

まとめ

最後に宮川先生は「ドライフードしか食べないという犬猫が最近増えているように感じる。特に猫は幼少期からウエットフードを食べさせることが重要だが、残念ながらそのように指導しているブリーダー、ペットショップ、フードメーカー、獣医師は少ない」とおっしゃっています。

まとめると、とにかく十分な水分を摂りましょう👍

いつも言っている通り、水分さえしっかり摂って十分な尿量を維持していれば、多少尿のpHが不安定でも問題ないと思います🙆🏻‍♂️

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この記事を書いた人

猫好きの獣医師です。野生動物の診療、動物病院の勤務、研究職を経て、今はフリーランス獣医師です。主に犬と猫の食事の情報を発信します。世間には誤った知識が多く(古い知識がまだ当たり前になっていて)、栄養学にうとい獣医師も少なくありません。微力ながら犬と猫の命を救う手助けができれば幸いです。

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